Simple is Best!
小さい事は、いい事だ


 理由は判らない。俺は昔から、小さい物が好きだった。今でこそ、収納場所に困るとか、持ち運びに不便、と言う事情が有るが、そんな悩みを持たずに済む頃からそうだった。トイガンについてもその傾向は変わらず、大抵、フルモデルよりもコンパクトモデルを、アーティラリーよりもシビリアンモデルを選んでいる。

 機械についてのみ、俺は自分の小型嗜好の根元が判っている。発端は、と言うと、F1のエンジンだ。

 俺が観戦を始めた頃、F1の世界は転機を迎えつつあった。ドライバーで言えば、過去の王者が次々と去り、ミハエル=シューマッハーの台頭が始まっていた。技術的に言えば、エンジンパワーだけで勝てる時代は過ぎ去り、トータルパッケージングと言う言葉が幅を利かせ始めた時代でもあった。
 1992年だ。F1フル参戦1年目のミハエル=シューマッハーはベネトン・フォードを駆り、当時、エイドリアン=ニューウェイの空力デザインと、ハイテク装備のコラボレーションで無敵を誇ったウィリアムズ・ルノーの2台に次ぐ、3位のランキングを手に入れた。4位にマクラーレン・ホンダのアイルトン=セナを従えての成績なのだから、凡そ新人離れした、赫赫たる戦果だ。
 当時、ベネトンの空力、旋回性能には定評が有り、非力なフォードV8エンジンだけが弱点と思われていた。例えば、当時のF1ゲームで自由にエンジンを換装出来る作品があり、ゲーム中最速の組み合わせはベネトンB192+ホンダV12だった。その頃フォードはV12の開発を進めていた。フォードV12がデビューすれば、ベネトンは最強チームとなる。そんな声も囁かれた。
 今にして思えば馬鹿な話だ。B192の軽捷は小型軽量のV8搭載を前提としたデザインに負っている。大きく重く、燃費も悪いV12を搭載すれば、空力デザインは成約され、車重も増し、重量バランスも悪化し、B192の長所は消尽する。しかし、当時、F1を傍から眺めている人々の知識はそんな物で、フォードのV12開発に疑義を唱える声も、決して大きくはならなかった。F1観戦を始めたばかりの俺も例に漏れず。V12の登場を心待ちにしていた物さ。
 
 所が、だ。
 93年。フォードはV12計画の中止を発表した。俺は落胆もしたし、疑問も抱いた。エンジンパワーさえ得られれば、ベネトンは躍進する。マイケルが王者になる。脳天気でお目出度い学生だった俺は、素直にそう信じていたからだ。そんな俺の落胆を解消してくれたのが、94年に発表された、フォードV8ゼテック−Rだった。


 細かい事は、憶えていない。憶えているのは、フォードが発表したゼテック−Rのスペックは、衝撃的な物だった、と言う事だけだ。当時、F−1誌はゼテック−Rを手放しで褒め称えた。小型軽量、高燃費性能は言うに及ばず、よく走り、よく停まる、高いドライバビリティ。V10に迫る回転数。高回転から低回転までをカバーする、太いトルク。ウィリアムズが搭載するルノーV10にも互す────いや、総合的には凌ぐ、名エンジンだった。B194を手に入れたミハエル=シューマッハーは、新車発表会でタイトルの獲得を射程に捉えた、と宣言する。そして、94年。あの不幸な事故もあって、マイケルは無敵の強さを発揮する。強すぎてタイトル獲得が遅れた、と言ってもいい。FIAの露骨なショーアップが無ければ、彼は間違いなく、史上最年少のタイトルホルダーとなっただろう――――まあ、どの道、2005年にはフェルナンド=アロンソに更新されてまうのだけど……

 それ以来、俺は小さな機械が好きになった。大型で高機能、高性能な物より、小型で洗練された物が好きになった。それに、男は殆ど例外無く、よく出来た機械に感動を覚える物だ。実銃を模した小さな型に、ガス圧でBB弾を発射すると共に、スライドをブローバックさせる複雑な機構を仕込む。無意味な物に、高い技術をつぎ込んだ玩具を 俺が好んだのは、自然の成り行きだった。今も、俺は固定スライドの銃には全く興味を覚えない。


 さて、俺は大抵の場合、ミスタ・ロバート=デニーロの店で銃を買っている。用が無くても友人に付き合って遊びに行く。ショー・ウィンドーを何気なく眺めていた俺は、一丁の銃に興味を持った。KSCのG26C。最小のガスブローバック・マシンピストル。
 俺は洗練された機械が好きだ。小さな機械に、従来に無い機能が備えられていると、尚更感激する。昔、銃を殆ど知らなかった時は、拳銃でバーストやフルオートが可能などと思いも寄らなかったから、ベレッタM93Rは長らくお気に入りの銃だった。所が、G26Cの小ささは93Rの比では無い。
 実銃のGlock26にフルオートモデルは存在しない、と言う。KSC曰く「面白そうだから作ってみた」。その発想も気に入った。そう言えば、93Rも実銃にはフルオートの機構は無い。東京マルイの同モデルに実射性能で大きく水を空けられている為、と言う事情もどうでもいい。
 俺はG26Cの購入を決めた。

「G18C。俺、もう使わんから売ろうか?同じグロックで、あまし変わんないよ」

 友人の一人が、そう言った。

「いや、G26Cがいいんだ」

「なんで?」

「スライドが短いだろ。早いサイクルで、スコスコ、動くのは楽しそうだ」

「なんだよ、そのスコスコ、て」

「黒くて太くて固い銃が、右手の中でスコスコと素早く往復運動しながら、白い弾をまき散らすのは気持ち良さそうだと思わないか?」

「いい加減にしろ!」

 そんな訳で、俺はG26Cを入手した。フルオートで撃ってみた。サイクルは確かに早いが、当然、リコイルは柔弱で、友人から借りた93R程の爽快感は得られなかった。

 実は94年当時、一度だけゼテック−Rに関するネガティヴな情報を目にした事が有る。曰く、分解、組み立てに異常に時間がかかる。その為、開発速度が遅い、と。
 後年、ミハエル=シューマッハーはゼテック−Rについて語っている。

「言われてた程、いいエンジンじゃ無かったよ」

 高回転と言っても、実用の回転は低く、トルクも大して広い訳では無く、操縦性もピーキーだった、と。事実、翌年にルノーV10を手に入れた彼は、その操縦性の高さ、特に塗れた路面での安定性に驚き、どうして94年の日本GPで自分達がウィリアムズと戦えたのか、と疑問を抱いている。
 また、別の機会に彼はこう言っている。

「V8は、速く走らせるのにコツが要る」

 ま、結局、俺がゼテック−Rに抱いた好感なんてのは、幻想だった、て話だ。

 それでも、俺は相変わらず小さな機械が好きで、大型のオートには食指が動かない。




















 以前、銃はもう買わない、と書いた。買い物でハッピーになるには、分別が要る、と。
 俺は意見をコロコロ変える人間なんだ。人間は学習する。それだけの話だよ。










First up date - H.17.05/22
Last up date - H.18.08/06
by YO - HIDAKA

−結−

−マルシン REMINGTON DOUBLE DERRINGER−

−MGC .32 AUTOMATIC COLT PISTOL Mod M 1903 “hammerless”−

−マルゼン REMINGTON M1100 DEFENDERU−

−KSC S&W M945 Compact−

・序

−モドル−